苗字が違う家族
更新日時:
2005/03/30
以前、シドニーシェルダンの小説を読んでいて驚いたことがある。それはヒロインの母が大富豪である愛人の子どもを身ごもって密かに産むくだりでのこと。彼女は迷った末、赤ちゃんに愛人の苗字をつけたのだ。もちろん愛人の合意なしである。果たしてこんなことが可能なのだろうか。
この件に関しては正確なことは私にはわからない。州によっても違うだろうし。しかし、苗字は簡単に付けられるらしい。
最近ジョニーのガールフレンドが赤ちゃんを産んだ。しかし、二人は結婚しないばかりか一緒にも暮らさないらしい。でも、現在この子はジョニーの苗字を名乗っている。後見人は母親であるにもかかわらず。籍というものが存在しないこの国では、そういうことがややこしい手続きなしにできるらしい。
新聞で読んだのだが、夫婦別姓を貫く(つまり事実婚)、ある日本人のカップルに子どもが生まれた時、父親の姓を名乗らせるために、出産直前にいったん結婚し、またしばらくして離婚したという話を聞いたことがある。日本には戸籍があるので、名前を変えるというのは大変なことなのだ。
両親が離婚して子どもを母親が引き取り、やがて母親は再婚する。アメリカでは、そういう時も母だけが新しい夫の苗字を名乗り、同居の子どもたちは依然、前の夫の名前だ。新しい夫が彼らと養子縁組すれば別だが、これはめったにされていない。たぶん養子にしてしまうと、前夫からの養育費はもらえなくなるだろうし、万が一また離婚したら継父であるにもかかわらず養育費問題が発生するので、離婚大国のアメリカでは慎重にならざるをえないのであろう。だから離婚再婚を繰り返し、そのたびに子を設ける女性の家では子どもの苗字がみんな違ったりするのだ。
反対に日本ではどうだろう。以前、大物女性歌手が再婚した時、女性週刊誌によると、娘だけがしばらく前夫姓を名乗っていたことがあったらしいが、娘がかわいそうと、けっこう非難ごうごうだった。集団が重視される日本では、今暮らしている家族が一つの運命共同体で、新しい親が、出て行った産みの親より優先されていることが多いように見える。一方アメリカの家族は個人の集合体なので、離れていても産みの親との関係は途切れることはない。もっとも日本もだいぶアメリカのような形になりつつあるらしいが。
余談であるが、つい先日まで、国会で夫婦別姓を認めるか認めないかで大騒ぎしていたが、国際結婚の場合、結婚しただけでは苗字は変わらない。婚姻届と同時に姓名変更願いを出さなければならないのである。実はほんの20年前には外国人と結婚した日本人女性に姓を変える自由はなかったのだ。それは外国人差別というより、日本が父系血統主義だったからで、父親が外国人の場合、たとえ母親が日本人でも子どもには日本国籍が与えられなかった。(母が外国人の場合は問題なかった。) たくさんの女性たちが当然の権利を得るために戦ったことを私たちは忘れてはならない。