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23 知らない町では中華料理?


もう10年以上も前、ある雑誌で某女流作家が
「ガイドブックもない初めての町旅をした時には、私は中華レストランに入るようにしています。
味も値段も無難で失敗がないので。」
と、書いていたエッセーを私は「ああ、そうなのか。」といたく感心して読んだものだった。
そう言われればそうかも、と。

 そして素直な私はそれを忠実に実行した。
場所はベルギーのアントワープ。
ガイドブックもたくさんある有名な町ではあったが。

 まず中華街に行き、今となってはどうしてその店を選んだかは忘れてしまったが、
とにかく一軒の店に入った。
ドアを開けるとそこはまぎれもなく中国。まるでヨーロッパとは思えない。
店員も客も中国語を話しているのである。

 私を同胞とは見てくれなかったウェートレスは「何故来たのだ?。」という顔で私を見つめる。
一瞬この店を選んだことを後悔するが、気を取り直してとにかく席に着く。

 ウェートレスは英語のメニューと水を持ってきた。
(あれ、ベルギーでは水はサービスだったっけ?ちょっと記憶が定かでない・・・。)
周りを見渡せば、他の中国系の客はジャスミン茶のような物をもらっている。
めげずに私もチャイニーズティーと漢字のメニューをくださいと頼んだ。

 店の中でひとり浮きまくりだった私であったが、料理がおいしければ別に文句は無い・・が。
まずかった。非常にまずかった。
最初英語のメニューを見て焼きそばをオーダーしたつもりが来たのはビーフン。
油っこい。安くてしかも古い油である。
その後、中国語のメニューで春巻きを頼んだのはよかったが
ヨーロッパ風らしく、ケチャップ添え。
思わず醤油を持ってきてもらう。
しかし醤油でごまかしても油っこいのは消せない。
他にも何か食べたかもしれないが忘れた。

覚ているのは、ホテルに帰ってトイレで吐いたこと。
(お食事中の方、すみません。)

 この旅行の後も、アメリカでしょっちゅう中華料理を食べているが
はっきり言う。「まずいところはまずい!。」
そしてもうひとつ言いたい。
「中華料理のまずいのは最悪である。」

あの例の女流作家に手紙でも書こうかしら。

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