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 旅で日本についての質問を受ける

 旅は出会いの場である。国際交流の絶好のチャンスだ。いささか大げさな表現ではあるが、私も日本代表として正しい姿を伝えるべくいつも最大限の努力をするよう心がけていた。

 

 ある時、東欧のある国の船の中で、アメリカから来た新婚夫婦に出会った。新妻は私たちには無関心であったが、夫の方は好奇心丸出しでいろいろ聞いてくる。なんでも、新婚旅行を東欧にするか、日本にするか迷ったそうだ。(全然違うじゃん!)彼は日本の企業について聞いてくる。「女性は結婚したら会社を辞めなければいけないのか。」とか、「毎朝ミーティングの時、社歌を歌うのは本当か。」とか。どこでそんな話を仕入れたかは知らないが、それは一昔前の話だと言っておいた。

 

 国境を越える列車の中であったスキンヘッドの一見怖そうなオーストリア人のおじさんには、「私が知っている兵隊たちの中で一番優秀だったのは日本人だった。」などと懐かしそうに言われて返答に困ったこともあった。

 

 ヨーロッパの某国のお城の一日バスツアーで、カナダ人たちとお昼を共にした時に聞かれた事は「日本人の女性がタバコを吸うところを見たことが無いのだけれど、吸わないの?」だった。90年初頭の事だ。この旅より2年前のスペインで、私は、歩きタバコの女性を驚きをもって見ていた覚えがある、そんな頃だ。私はことばを選びながら答える。「女性はパブリックな場所ではタバコを吸わないだけ。」「ほほう」と皆感心する。こうやって振り返ってみると10数年で隔世の感があるなあ。今や日本女性はいたるところでタバコを吸うが、ヨーロッパはともかく、アメリカでは、公共の場でタバコを吸う人を見ることはない。(ここ数年、日本もようやく変わってきたが。タバコのマナーや害に付いての政府や国民の姿勢は、アメリカより20年は遅れているとPAULは言う。)

 

 イタリアに行った時は、日本は、ちょうど首相の愛人問題で揺れ動いていた時だったが、なぜか地元のイタリア人たちはこの恥ずべき事件をよく知っていた。「僕の知っている日本語はトウシバ、ヒタチ、スズキ、ウ○。」と首相の名前まで知っている。「ほら新聞に日本が出ている。」とやはり愛人問題で一線から退かざるを得なかった閣僚の写真を見せられたことも。いったい、このフレンドリーなイタリア人は、こんな話題で私たちが喜ぶとでも思っていたのだろうか。謎である。

 

 

 日本人であることをより意識するようになった今、私は、ありとあらゆる日本に対する質問の答えを用意している。やはり愛する母国の正確な姿をより多くの人に知ってもらいたいので。そして英語はそのための大切な道具である。

 

 

 先ほど述べたお城のツアーでのこと。例によってカナダ人たちが私にたくさんの質問を投げかけていたが、一つだけ、聞き取れない問があった。しかし、聞き返すのも面倒くさかった私は、日本人の悪い癖で「YES]と答えてしまったのだ。そうしたら、なんと「おおっ」とすごいどよめきが。あまりの反響の大きさに私は一瞬たじろいだ。一体全体私は何を肯定してしまったのだろう。怖くて聞けなかったが、カナダのどこかで、今も日本に対する大きな誤解をしている人々がいるかもしれないことを思うと身もすくむ思いである。

update:

2004/09/14

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