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飛行機は飛んだのに

 突然の大雪に見舞われた日の翌朝、3日間滞在したダラスに別れを告げた私たちはコロンバスオハイオに飛ぶため、チェックインカウンターに出向いた。ところが荷物はチェックインできたものの、搭乗券はPAULの分しか発券してくれない。私のチケットには座席番号の代わりに大きく「OVERSOLD」と書かれていて、これを持って搭乗カウンターに行けと言う。この時点では私は「まあ何とかなるだろう」とタカをくくっていた。

 

 搭乗口ではしきりにボランティアを募っていた。次の便でもかまわない乗客はここで金権と引き換えに自分の座席を譲るのだ。ちなみに、日本人と結婚しているアメリカ人の友人は里帰りのたびにボランティアに名乗りを入れ(国際線は1000ドルくらいもらえる。)、次の渡航分を結構これで稼いでいるとか。私はボランティアが現れるまでカウンター前で待たなければならない。PAULが搭乗する時が来たので、連絡先を確認して彼を見送ることに。

 

 離陸5分前、とうとう私の名前が呼ばれ、この飛行機には乗ることが出来ないと告げられた。「あら~久しぶりの一人旅だわ。」などとのんきに構えてみたものの、「そうだ、PAULに知らせなければ。」と思い、「夫が乗っているんです。」と言ったら、なんと彼まで降ろされてしまった。「別に行ってもよかったのに。」と言う私にスタッフからの「50人乗りなのですが、悪天候のためパイロットが40人しか乗せないと決心したんです。」とのことばが。そうか。一見、私のためと見せかけて、実は渡りに船だったのね。

 

 結局この日はどの飛行機にも乗れず、ホテルと三食のミルクーポン翌日のファーストクラスの搭乗券(直行便だったのにシカゴで乗り換えになってしまった。)、そして一人250ドルの航空引換券を貰う。ちなみにこれが今度の旅での唯一のホテル宿泊になった。はっきり言ってホテルとは名ばかりのモーテルであったが。

 

 ミルクーポンも昼は一人7ドル、夜は10ドル、朝は5ドル。私たちのホテルにはレストランがないので隣の有名なホテルに出向いたら7ドルではサラダも食べれやしない。空港近くのホテルなので車のない私たちはまるで陸の孤島にいるようだ。(シャトルバスをいつでも出すとは言われていたが。)しかし私たちには強い味方の家族がいる。さっき別れたばかりのケイティが午後には駆けつけてくれ、私たちは彼女の車でスーパーに行き、下着とパジャマ代わりのTシャツを買った。何しろスーツケースは一足先にオハイオに飛び立ってしまったのだ。

 

 非常に少ない金額のミルクーポンについては、昼に夜の分を使い(それでも足が出たが。)夜は割り切って、自腹を切りケイティとアンディの4人でイタリアレストランで楽しく食事をした。朝食のミルクーポンは翌朝の空港でカフェラテを飲んでおしまい。ファーストクラスには機内食があるので、余った昼のクーポンを使い、搭乗前にジュースとおやつ用のディニッシュを買う。この金額内で食事なんて絶対無理。航空会社は何を考えているんだか。

 

 最初はとんだ災難だと思ったが、実際はこれでよかったのかも。楽しい1日をアンディたちと過ごせたし、何より次の目的地のオハイオではアイスストームのため、4日間全くの停電だったのだ。ファーストクラスに乗る前に二人で、「慣れているフリをしようね。」等と言っていたのだが、周りを見たらけっこうはしゃいでいる人が多かった。けっこう皆、同じような経緯で乗っているんだろうな。

 

 教訓:飛行機に乗る時は最低1泊分の荷物は機内に持ち込むべし。

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