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ータータクシーは頼りない?(タイ.バンコック)

 今は知らないが、私が行った当時はタイには2種類のタクシーがあった。メータータクシーと交渉タクシーである。土地勘のない外国人には交渉タクシーは足元を見られて大変だと思ったので、なるべくメータータクシーを拾うようにしていた。しかし、これはこれで信じられないような気苦労があったのである。

 

 まず英語が通じない。私たちのホテルはチャイナタウンにあったのだが、(ガイドブックには、この町には似合わない場違いなホテル、書いてあった。)ほとんどのタクシー運転手は場所を知らないどころか、チャイナタウンという言葉すら通じない。タイアクセントでの言い方を運転手に教えてもらったのはだいぶたってからである。

 

 ある日のこと。暁の寺に行こうと思ってタクシーを拾った。念のために述べるが、暁の寺はひじょーに有名な観光場所である。しかし運転手は知らないと言う。タイ語で書かれた地図と写真を見せても首を振るばかり。もちろん英語もまったくわからない。

 

 私は地図を見せながら日本語でまくしたてる。英語が通じないのだから何語でしゃべろうと同じなのだ。

「いい?ここが今私たちのいる所。ここからこの橋を渡る。そしてこっちに曲がる。わかった?」

なんで観光客がここまで教えてあげなければいけないのだ?ふつふつと怒りが沸いてくる。

 

 目的地が近くなんて来た頃、タクシーを走らせながら運転手は寺を通過するたびにこれか?と聞いてくる。おいおい、似ても似つかないじゃないかと思わずため息。しかし。嘆いている場合ではない。私たちだって初めて訪れる場所。ガイドブックの小さな写真だけが頼りだ。地図と写真をにらみながら見逃さないように外の風景を凝視する。

 

 「あ、これだ!」見つけたときは心底ホッとした。私たちも、運転手も。

 

 もしかしたら昨日バンコックに着いたばかりの運転手だったのかも。やがて彼も英語と地理に慣れてきたら、利益の大きな交渉タクシーに鞍替えするのかもしれない。

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