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私たちの乗車券はどこ?(ブタペスト)

 ブタペストに着いて2日目。私たちは翌々日に行くウィーンへの鉄道乗車券と座席指定券をまだ 受け取っていないことに気がついた。これは日本の旅行社が事前に手配してくれていたものだ。(今思えば、高い通信料、手数料を出さなくても十分自分で出来ることだった。)

 

 旅行社からの手配書によると、ホテルのカウンターに預けてあるとのこと。さっそくフロントに行って聞いてみると「そんなものは預かっていない。イブス(当時ハンガリーを牛耳っていた国営の旅行社)に聞いてくれ。」と何ともつれない返事。仕方がないので午前中の現地の市内半日観光に参加後、ホテルから一番近いイブスに行ってみた。

 

 スタッフは「わからないので本社行って聞いてくれ。」と言う。地図で調べると、徒歩で10分くらいの距離だ。私たちはまたテクテクと歩き出した。

 

 本社に着いたら今度は鉄道専門のイブスへ行けとのたまった。幸いなことにフリーの旅行者であり、日数的にも余裕(と、いっても、たった3日間の滞在だが。)があったのでパニックにはならずにすんだが、しかしだんだん怒りがふつふつと沸いてくる。それは手配旅行と称して高い手数料をぼったくった日本の旅行社に対してであり、融通のまったく利かない、親方日の丸の上にあぐらをかいていたイブスに対してである。交渉係の私を気遣って友人は、一人静かに地図を読みながら私を次の目的地に連れて行ってくれる。感謝。

 

 そしてここが最後、と臨んだ鉄道専門のイブス。やはり恐れていたことが起こった。本社に行けと言うのである。さすがに穏やかな私もここで怒り爆発。「私たちは日本から来たんですよ。チケットはイブスにあるというのに、こんなにたらい回し!もうどこにも行きたくないので今すぐここで探して見つけてください。」と啖呵を切った。

 

 私の剣幕に恐れをなしたのか、それとも同情してくれたのか、スタッフの女性は私の名前と日本の旅行社の名前を聞き出し、どこかへ電話を掛け始めた。そして数分後・・。「お二人が泊まられているホテルのイブスカウンターで預かっています。」

 

 は???ホテルにあるイブス?そんなのがあったとは気がつかなかった。自分のそそっかしさにちょっと照れ笑い。まだ事情が飲み込めていない友人に説明してあげたらなんと友人はイブスのスタッフに向かって深々とおじきをした。口には出していなかったがきっとかなり不安だったのだろう。

 

 ホテルに戻ってみたら、フロントのまん前にイブスの小さなボックスが、デパートの案内所のようにぽつんとあった。あの時ホテルのフロントのスタッフが「あちらのイブスでお聞きください。」と指差して言ってくれたら、こんなに歩き回らずにすんだのに。「地球の歩き方」にこのホテルは「慇懃無礼」と書かれていたことに今納得。イブスのカウンターで聞いたら、何事もなかったかのようにチケットを渡してくれた。このお姉さんにはこの後もクルーズを予約してもらったり隣の町の観光地への行き方を聞いたりといろいろお世話になった。

 

 少し時間を無駄に使ったけど、お陰でブタペストを隅々まで歩くことができた。普通の観光客はこんな所は通らないぞというストリートも、きたないので観光客に見えないように隠している(と思われる)場所もしっかり見た。今考えてみるとけっこう楽しかったりして。

 

 ちなみに窓からの眺めがすばらしいというので選んだこの5つ星のホテルはあまり儲からなかったらしく、旅行後まもなく他のホテルチェーンに売却したということを新聞で知った。やっぱり慇懃無礼だったからであろうと私は確信している。

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