異国で出会う日本人
私が初めて外国に行った時の感想は「日本人ってどこにでもいるんだなあ。」というものだった。いたる所で日本人の団体に遭遇し、売店には日本語のガイドブックが売られ、お城の中では日本語の案内が流れ、ある観光地のトイレに至っては「トイレットペパー以外は流さないでください。」と日本語でしか書かれていない。観光スポットで写真を撮ればあちらこちらのカメラに向かってポーズを作っている日本人が写ってしまう。フリータイムに街を歩けば「ちぇっまた日本人だよ。」とすれ違いざまに捨て台詞をはく男性。それはこっちのせりふだよ!
しかし、考えてみたら当然のことなのだった。土日を最大限に生かすヨーロッパ初心者コース、定番スポットの団体ツアーに参加したのだから。パッケージツアーはいわゆる点と点をバスでつないで見て歩く。途中がまったく抜け落ちているのだ。そんな当たり前のことに気がついたのは個人旅行をするようになってからである。
トルコに行った時に利用した航空会社は週2便の運航だったので、往復同じという観光客が多かった。そこにはたくさんのツアー団体が搭乗していたので、「これはどこに行っても日本人ばかりだ。」と覚悟したが、着いてすぐアテネに2日ほど「寄り道」した私たちは「軌道」を外れたため、最終地のイスタンブールまで日本人の団体に遭遇することはなかった。
ブタペストから隣接の町まではガイドブックお勧めのフェリーを利用したら、なんと小さな船に3組の大きな日本人の団体ツアーが乗り込んできた。しかし彼らのバスが降地の船着場で待ち構えていてあっという間に消え去った。普通の乗客は市街まで徒歩15分の距離を歩くのである。それでも私と友人が市街に着いた時はまだ彼らをちらほらと見かけていたが、昼食を食べ終わったら完全に消え去っていた。
グランドキャニオンでもセスナで移動するツアー客は、突然現れ突然消える。たぶん旅をするということより、「有名な観光地に立つ」ということが重要なのかも。私も以前はそうだったので偉そうなことは言えないが。
点と点の移動でなく線をたどる旅をするようになってからも、もちろん日本人には出会った。しかし皆、同胞にあってもなぜかそれほど嬉しそうではない。
不思議なのはヨーロッパで出会う日本人はたとえ個人客でもよそよそしいのに(ウィーンでは同じホテルに泊まっている数少ない単独の日本人女性に町で会ったのに、顔を背けられてしまった。)アジアなどでは会う人会う人がやたらフレンドリーなのだ。当方はたかだか2週間弱の旅なのに、なぜかお互いに共通の人を知っていたりする。「赤いバックパックの○○さん、ああ、知っている。彼女熱だして××のホテルで寝込んでいたよ。」とか。一匹狼のバックパッカーたちはそうやって情報を交換しながら歩いているのだろう。自分たちの旅が自慢でもあるらしく、「ここまででまだ5万しか使っていない。」とか聞きもしないのに教えてくれる。彼らのワイルドな旅の話を聞くのもまた楽しみではあったが。
ヨーロッパの街中でも一人旅の学生たちは男も女もけっこう人懐っこい子が多かった。少しだけ(えっ?)お姉さんの私はおごってあげたりもしたっけ。時たま道中一緒に歩いたが、貧乏旅の学生とリッチな独身貴族のお姉さんでは趣味があわず(彼らは美術館などをパスしたりするので。)たいていはすぐ別れるのであるが。楽しい思い出もたくさんあった。ベニスで会った学生U子ちゃんは、数年後には某国の大使館勤務となり、私にその国を訪問するきっかけを作ってくれたのであった。